タイの解雇金調停 ②

前回までのお話で、解雇金の調停では証拠資料が重要だと書きました。

これは単なる払う、払わないの話し合いならば労働裁判の意味をなさず、社内で話し合いをしているのと変わらないからです。

労働者側は勤続年数を証明さえすれば解雇金額は明確ですから、労働裁判にあたって特に準備することはありません。

むしろ、法定の解雇金を支払えないと主張する私たち法人側がその根拠となる書類を提出し、調停員を味方につけなければなりません。

その根拠となる書類には従業員の不正行為、勤務態度の詳細等を証明する書類、その従業員を相手にした被害届や従業員本人の謝罪文なども有効です。

しかし多くの法人の場合、撤退や会社閉鎖の場合に解雇金が問題となるわけですから法人に現金が残っていないことが通常です。

そこで、裁判の日までの通帳コピー、財務諸表、今後の収入支出予定などをまとめた書類を作成し、いかに支払いが不可能かをプレゼンする必要があります。

大事なのは、これら文書を当然弁護士や調停員が読めると思わずに素人にでもわかる書類作成を心掛けることです。

ここで作成した資料は調停員に響くがどうかが最も重要ですから、見栄えや完璧さよりも分かりやすさを重視してください。

従業員側などはシンプルな数字を出してもその意味を全く理解しないので無視で大丈夫です。

今回の私の法人側は資本金が何十億円もある日本上場企業のグループ会社で、タイ国内でも常に何百万バーツの取引を手掛けている会社です。

そのような案件を担当し、これまで長年にわたって待遇面で他社よりも優遇されてきた従業員達は、会社にお金がないなどとは到底信じてくれません。

今はそれだけのお金しかないのが本当だとしてもどうにか払えるでしょう、実際このくらいにしか考えていません。

そこで調停員と裁判官(第二審)に納得してもらえる書類の作成に集中し、通常の審理に移行した場合でもそのまま使えるよう書類を作成しました。

「調停の日には書類の通りお金がこれだけありましたが、今は予定通り支払いにこれだけ使ったので残りはこれだけです。今ならこれだけ支払えますが裁判が結審するころに

は(通常約1年)これだけしか残らないのでほぼ支払えなくなる予定です。」

このような流れをあらかじめ頭に描いておくと従業員の解雇も行いやすいです。

また、私はオフィス賃貸のデポジット返金などは比較的金額が大きく、それを狙われたくないので書かないようにしています。

他にも保険金など、会社を完全に閉鎖後、つまり解雇金交渉が終わってから返金されるたぐいのものについては記載しないのがコツです。


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